【日本ラグビー界が抱える数々の課題 】<「いつまでもW杯の「感動」だけで人気を維持できるほど、スポーツ界の競争は甘くない>

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 平成元年(1989年)には、正代表ではなかったとはいえ、来日したスコットランドから史上初の金星を挙げ、令和となった今年も自国開催のW杯でこれまた史上初めての8強入りを果たした。

 しかも、優勝候補のアイルランドを破り、スコットランドの正代表を倒してのベスト8だ。列島には「にわかファン」が急増し、代表チームのスローガン「ONE TEAM」は流行語大賞を受賞。11日に行われたパレードには“我らがヒーロー”をひと目見ようと5万人の観衆が丸の内を埋めた。

 4年前に同じW杯で優勝候補の南アフリカを倒した実力が、本物だったことを証明したのだ。

 パレードで凱旋したキャプテンのリーチマイケルは、ファンに謝辞を述べたあとで「さらに上を目指して」4年後に挑む決意を披露した。

 ラグビー界にとっては実り多い一年間だった。

ファンの期待と現実のギャップ

 しかし、ではこれからもラグビーは順調に「世界に通じる競技」として存在感を発揮できるのかというと、これが実は心もとない。

 ラグビーは、ポーカーに例えれば、今回が日本でのW杯初開催という意味で、ビギナーズラックに恵まれて望外の成果を得たのにすぎず、これからはどんどんチップをレイズされた状態で戦うことを強いられる。

 国内のファンも、ベスト8以下の成績では満足せず、さらに「上」の結果を求めるだろう。

 ところが、歴史をひもとけば、初めてベスト8に到達した次の大会でベスト4以上の結果を残したチームは、第1回大会で8強入りしたイングランド(第2回大会準優勝)と、スコットランド(同ベスト4)だけ。そのくらい「さらに上」へのハードルは高いのだ。

 しかも国内に目を向ければ、7月に清宮克幸日本ラグビー協会副会長がぶち上げたプロリーグ構想は今に至るも構想のままで、2021年度からの実施に暗雲が漂う。

 代表強化のための施策と位置づけられたサンウルブズによるスーパーラグビー参戦も、20年度限りで「除外」となり、それに代わる代表強化策は未定のまま。つまり、成果を4年後につなげる道筋が見えないまま、年を越すことになる。

 代表選手たちの活動母体となるトップリーグは、年明け12日に開幕。5月9日の最終節まで熱闘が続くが、この期間がスーパーラグビーのシーズンと重なるため、果たしてサンウルブズに“W杯戦士”たちが参加するかどうかも不透明なままだ。選手たちが所属する各チームは、これまでW杯のために選手を代表やサンウルブズに送り出してきた経緯があり、今回は、なかなか選手たちを手放しそうにない。

 7月には来日するイングランドと2試合、11月には敵地に乗り込んでのスコットランド戦、アイルランド戦が予定されているが、5月にトップリーグとスーパーラグビーが終了すれば、それ以外に予定されている試合は、東京五輪で行われる7人制を除いて、現段階ではない。21年のトップリーグを、清宮副会長が提唱するプロリーグへとリニューアルできるか否かが分からないため、20年秋以降の日程を組めずにいるのだ。

 トップリーグ参加チームの関係者が言う。

「清宮さんの剛腕なら、プロリーグが21年から実現する可能性もゼロではないかもしれないが、まだ各チームの対応もバラバラで、プロ化に積極的なチームもあれば、様子見といったチームもある。むしろ、今のトップリーグを発展させる形の方が現実的ではないでしょうか」

 実際、21年から新しいリーグをスタートするためには、20年度の成績によって参加チームを決めるのか、それとも今のチームを統合・再編するような形で参加チームを募るのかも決まっておらず、これでは21年スタートは難しい。

 仮に、22年にスタートさせるにしても、そのためには、21年度のトップリーグをどう位置づけるかを明確にする必要がある。

つづく

1/2(木) 9:26配信
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