【古谷経衡】排外主義を煽るネット右翼コア層と、日本社会はどう向き合えばいいか?[01/05]

 テレビやラジオでコメンテーターとしても多く目にする古谷経衡氏による処女小説『愛国奴』(2018年出版/駒草出版)が改題し、『愛国商売』(小学館)というタイトルで文庫化された。

 『愛国商売』は、保守論壇に入り込んだ主人公の青年・南部照一が、保守系雑誌・保守系ネット番組といったメディアの内部に入ることで、その世界に幻滅していく物語。

 小説のなかで、保守系論壇に入ったばかりの南部は発言の機会が与えられるたびに入念な準備をして望むが、そこでの主張は客に理解されることはなかった。なぜなら、彼らは真摯な言論など必要としていないからだ。

 読者・視聴者が求めているのは、中国や韓国に対するヘイト的な言説だけであった。メディア側にいる人間たちはそのことをよく理解しており、小遣い稼ぎのために客の望むような質の低いコンテンツを提供し続けていた。その状況に南部は幻滅を強めていく──。

 古谷氏のキャリアは南部に酷似している。古谷氏は過去、「WiLL」(ワック)、「Voice」(PHP研究所)、「歴史通」(ワック・マガジンズ)、「正論」(産業経済新聞社)といった保守系雑誌に寄稿を重ね、「日本文化チャンネル桜」にも多数出演した。

 しかし、現在の古谷氏はそういった場所とは距離を置き、排外主義的なネット右翼の発言に苦言を呈するようになった。

 『愛国商売』は古谷氏の自伝的小説と言うこともできるが、なぜこのような小説を書くにいたったのか。現在の保守論壇やメディアについて、思うところを聞いた。


古谷経衡
1982年、北海道生まれ。文筆家。主な著書に『愛国商売』(小学館)、『日本を蝕む極論の正体』(新潮社)、『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『ネット右翼の終わり』(晶文社)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)など。

ソース
Wezzy 2020.01.02
https://wezz-y.com/archives/71658